亮布と神話世界

こんばんは。ヤマダです。今週1発目は亮布ネタから。

当研究所では冬の間も亮布を作っているのかというと、、冬期間の亮布制作はお休みです。

なぜ冬は作らないのかというと、冬は布を染めるのには非常に条件が悪いためです…。洗濯物がなかなか乾かないのと同様に、染めた布の乾きもとても悪いです(~_~;) 現地でも冬の間は機織り中心。聞くところによると現地でも亮布作りのピークは6~8月と言われています。

そんなわけで冬期間の私は何をしているかというと、ひたすら文献から神話・伝説漁りに励んでいます(笑)。普段あまり本を読まないためここぞとばかりに読書。出かけようにも、今は雪やコロナで出歩けないですしね。。

ということで今日は文献から得た蘊蓄を一つご紹介です。

亮布はざっくり言えば「藍染めの布」なのですが、藍以外にも使用している染材料がいくつかあります。

詳しい工程は割愛しますが(こちらにさらっと紹介)、なかでも変わった材料はと言えば卵白牛の革の煮出し液(牛膠)豚の血などでしょうか(血を使うのは地域によります)。

卵白。家鴨の卵などから。
牛皮
豚の血。新鮮なやつはにおわない。

ちょっと別の話をすると、亮布を作る少数民族のひとつ・苗族(ミャオ族)は祭祀の際に楓香樹の皮を剥いで食べる習俗があるそうです(これも一部の地域)。

楓香樹は苗族の始祖蝶々が生まれたとされる、彼らにとっては神様の木として崇拝されています(楓香樹について)。

何故樹の皮を食べるかというと「『食べる』行為によって祖先が生まれたとされる楓香樹と一体化したのであり、祖先を体内に取り込んで連続性を確認」(※)するという意味があるのだとか。

この「祖先と一体化する」点は亮布も共通性があると個人的には思っていて、先ほど挙げた卵白、牛膠、豚の血はそれぞれ次のように考えることができます。

・卵白→苗族の卵生神話を象徴

・牛膠→牛は苗族にとっての兄弟(卵生神話参照)であり、崇拝対象

・豚の血→豚は祭祀の際、牛の代替物として生贄になることがある(牛よりも安価なことも関係している

…というような感じで、それぞれの材料は神話や伝説に登場するモチーフと関連性が見られ、とても思い切った言い方をすると亮布は神話や伝説を取り込んだ布という風に考えることができるのではないでしょうか。

そして亮布衣装に欠かせないのが刺繍。刺繍はかつて文字を持たない民族であった彼らにとっての文字であり、刺繍の図柄は彼らの伝承を伝えてくれます。

超細密な刺繍

彼らはつまり、神話や伝説を取り込んだ布に刺繍をほどこす、或いは亮布に込められた神話や伝承を刺繍で具現化する、という行為を行っておりそうして作られた衣装を彼らが纏うことは、楓香樹を食べる習俗と同じように、彼らが神話の世界観と一体化することを表しているように思えてくるのです。

ここまで書いてみて私のテンションはふつふつと沸き立つのですが(笑)、どうです、亮布ってかっこよくないですか…!!?

共感できたよって方、あなたも亮布世界の住人決定です。笑

何が言いたいかっていうと亮布ってやっぱり面白いよね★ということでした

そんなわけで月曜からつらつらと蘊蓄日誌すみませんでした。。これに懲りず、また読んでくれると嬉しいです。

 (※)参考文献:鈴木正宗著『ミャオ族の歴史と文化の動態 中国南部山地民の想像力の変容』よりp.54から一部抜粋

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